どうして足が浮腫んでしまうの?浮腫みを治すにはどうしたらいい?そんなお悩みの皆さまにとって役立つリンパとむくみに関する記事です。
体の健康に関するリテラシー向上により、「リンパの流れが悪くなってる」とか「リンパが滞ってる」という会話が、普通になされるようになりました。
この記事では「リンパ腺とは何か」「リンパの働き」について説明します。米国シアトルに所在する『アカデミー・オブ・リンパティック』の教科書に基づく内容になっております。
私が「リンパ・ドレナージュ (MLD) Manual Lymphatic Drainage」を学び、「リンパ浮腫物理療法」の資格を取得した学校です。
「昔のボディーエコロジー のHPに掲載されていた、浮腫みやリンパ腺についての記事が見当たらないのですが」との問い合わせをいただいておりましたので、こちらに掲載しなおすことにいたしました。
リンパの構造はこんなふうになっている
リンパ管は全身にくまなく分布し、合流しながらしだいに太くなっていきます。
リンパ管の大きな合流点をリンパ節または リンパ腺といいます。
リンパ管とリンパ節が協同で、この複雑なシステムの機能をはたしています。
リンパ節は主に頚部(耳の下から首)、鎖骨の下、胸部、 腋の下、腹部、鼠径部(脚の付け根)に集中していま す。
上の図は、人体におけるリンパの主な流れを示しています。(実際には、さらに枝分かれした細かいリンパ管が無数に身体を網羅しています)
浮腫のもとになるリンパ液ってなに!?
リンパ管システムは、結合組織(皮下組織)にある過剰水分、 タンパク質、老廃物などを、リンパ液の流れるプロセスにおいて 浄化、濾過、濃縮した後、血流へ運び込む役目をします。
人間の体の役60%〜70%は水分(体液)であると言われて います。
その水分を大きく分けると「細胞の内部の液」と 「細胞の外部の液」に分けられます。
細胞の“外”にある体液は、 全体の約13分の1ほどですが、とても大切な働きをしています。
細胞外にある体液はさらに以下の2種類に分けられます。
1)血管内の液 “血液”
2)組織間液 および リンパ管液
一日に約2400リットルの血液が心臓から動脈を通って排出 されます。
🕺血液の流れ💃
太い動脈から
↓
徐々に細い動脈を経て、
↓
最終的に心臓から一番遠い、皮膚表面の毛細血管に至ります。
毛細血管の壁には隙間があり、そこから一日に約20リットルほどの血液成分の一部が血管の外に漏れ出ます。
それら血管外に漏れ出た血液成分の一部には、水分、ガス、電解質その他の小さな溶質、 と少量のタンパク質が含まれています。
🕺血管から漏れ出る成分💃
・水分
・ガス
・電解質
・溶質
・タンパク質
外に漏れ出たそれらの成分は、血管の外である“軟組織の隙間”に出ていき細胞によって使われます。
細胞が使った後、約16〜18リットルの液が、再び毛細血管の静脈側に入っていきます。
この血管外に出た量(濾過量)と再び血管内に入った量(再吸収量)の差「2〜4リットル」が、リンパ管に 入ってリンパの流れとなり、各経路を経て静脈へ環流します。
このリンパ管内の液をリンパ液といい、蛋白や脂肪を多く含んで いますが、赤血球は含まず、淡いクリーム色をしています。
リンパを理解して浮腫みに備える
お顔や足が浮腫んでしまうのは、流れているはずのリンパ液がどこかで滞ってしまっているからです。詳しくみていきましょう。
🧬正常なリンパの流れ🧬
動脈から送られてきた「水分」と「タンパク質」は、組織の細胞によって使われます。
↓
その後、
水分は➡︎ 静脈へ
タンパク質は➡︎ リンパ管へ
と流れ込みます。
この一連の流れの中で、タンパクを排除するリンパ管がうまく機能しないと、詰まりが生じます。
リンパ管に入れなかったタンパク質は、血管外の皮下組織の隙間に溜まってしまうことになるからです。
こうなると、組織間隙中の蛋白濃度が徐々に高くなってしまいます。
タンパク質が多くなっただけでは、腕や脚はむくみません。
浮腫みは、「タンパクが水分を惹きつける性質をもっている」ために起こります。
リンパが滞って浮腫むカラクリ
毛細血管内の圧は水分を血管「外」に押しだそうとしていて、血管内の血液の膠浸圧(水をひきよせる圧)は水分を血管「内」に引き寄せる ように働いています。
通常、血管の外の皮下組織の間の隙にある液も、“水分を押し返す力”をもっていて、血液と逆の働きをします。
動脈側では、
水分は血管外に濾出され、内から外への水分移動が起こり ます。
静脈側では、
外から内への水分移動(再吸収)が起こり、水分は吸収される事になります。
そしてその差がリンパ流になるのです。
これらの圧力の関係は、正常な状態ではバランスがとれているので、皮下組織での水分の貯留(むくみ)は起きないといわれています。(スターリングの仮説)
しかしバランスが崩れると、組織間隙内に 水分が溜まりむくみがおこります。
リンパ浮腫などの症状は、組織間隙内の液のタンパク濃度が上昇するために、このバランスが崩れることで起こります。
リンパはどのあたりに流れてる?
リンパ管やリンパ節がダメになった場合、組織間隙に溜まったタンパクと水分は排除されないのでしょうか?
そんなことはありませ ん。一部のリンパ管が障害をおこしても、身体の 機能は一生懸命なんとかタンパクを心臓へもどそうとして働きます。
手術などでリンパ管が切除されても、リンパ液は細々と脇道を流れ ようとします。
ちょうど主要道路が工事中で通れなくて、迂回して裏道を回って車を 走らせるようなものです。
しかし元々の機能が正常に働いていないので、人為的にマッサージなどによって外部から動かすことが必要です。
このリンパ液の“裏道”は、主に皮膚表面近くに多数存在しますので、軽くさするだけでリンパの流れが良くなります。
リンパ管は静脈より 遙かに細い管ですが、性質は静脈に似ています。手の甲に浮き出て いる静脈を軽く触ると、つぶれたり流れたりしますが、リンパ管も 似ています。
逆にきつく締め付ける下着などでくびれができるとリンパ流は簡単に 止められてしまいます。
リンパの流れの邪魔をしない為には、皮膚をへこませるようなきつい衣類は避けた方がよいでしょう。
浮腫まない人、浮腫む人
健康な体には浮腫はありませんし、浮腫んだとしてもすぐになくなります。
皮膚と筋肉などの間にある結合組織(皮下組織)には弾力のある繊維があり、皮膚と筋肉などの軟組織をお互いにしっかりと引きつける働きをしています。
健康な皮下組織には、弾力繊維が存在するために、それらの繊維が強く 引っ張りあい隙間がなくなっています。
なので健康な皮下組織には水や蛋白が溜まることができず、むくみの 液が入り込んだとしても、弾力繊維が収縮して水分を静脈やリンパ管に押し出してしまうのです。
動脈から押し出された水分は、強い皮下組織間隙内の圧におされて、圧の低い静脈内に押し込まれます。
また、弾力繊維の他に、皮膚の張り具合にも関係しています。皮膚がピンと張っていると皮下組織圧は高まることができます。
たるんでいて皮膚自体が弱いと、弾力繊維が強く引っ 張っても組織圧はできません。
身体の弾力繊維が切れてしまった箇所が多いと、皮下組織内は隙間だらけになり、浮腫みの水分が溜まっても、静脈に押し返す力がなく なってしまいます。
また、長く浮腫みの液があるままにしておくと(滞ったままにしておく)、皮下組織の弾力繊維は伸びきって切れてくるため、収縮することができなくなってきてしまうのです。
よけいな浮腫みを早く排除すると、皮下組織を正常に保つことができます。
その日のむくみはその日のうちに取ることが大切です。
マッサージで浮腫みをとろう
💆🏻♀️STEPP-1
まず最初に、身体の表面にあるリンパの流れの大きな分岐点 “リンパ節”あたりをマッサージしましょう。
リンパ節は、1つ1つはあずきのような豆のような形をしています(上↑の画像参照)。豆状のリンパ節が、お腹の奥の方、脇の下、足の付け根、耳の下、などに複数個集まっています。
お腹の裏側のリンパ節はアクセスしにくいので、深呼吸することでお腹の奥にあるリンパ節を刺激しましょう。
💆🏻♀️STEPP-2
頚静脈(首の付け根)
↓
胸腹部
↓
“ 鼠径部”(“腋の下”)
↓
脚または(腕)
を心臓の方向にマッサージしていきます。
💆🏻♀️STEPP-3
そして次に大腿、ふくらはぎ、足(上腕、前腕、手)の順に各部を リンパ節に向かってそっとマッサージすると、リンパの流れを促進 する助けになります。
💅備考:
手でやってもいいのですが、イノシシの毛のブラシを使うと楽ですし上手く流れます。その際、✖️ナイロン製の類似品には手を出さないように注意してください。全身の皮膚を撫でるので、軽いタッチであっても皮膚が痛みます。
必ず、◎天然毛のブラシを選んでください。
他者からリンパ・マッサージを受ける時の注意点
リンパに対して行うアプローチでも、目的によって全く違いますのでご注意ください。
他者からリンパマッサージを受けるときには、アメリカのエステシャンの間で行われている“美容目的”のリンパ・マッサージと、リンパ浮腫などリンパ管や皮下組織に問題や障害がある時に行われる “施術目的”の“リンパ・ドレナージュ”との違いにご注意ください。
アメリカやヨーロッパでのDr. Vodder直属のトレーニング機関では、エステシャンの為の美容目的のクラスと、リンパ浮腫療法士プラクティショナーへの治療の為のトレーニングコースとは、まったく別枠で行われております。
日本においても、エステで美容目的で行うリンパ・マッサージと呼ばれているものは、かなり力を入れて行われているようです。
一方で、蜂窩織炎や一般的な浮腫みを改善させるために、リンパ液を流していく施術の場合は、皮膚のすぐ下をはしるリンパ腺を通る液を扱います。そのため、とても弱い繊細なタッチでゆっくりと行います。
蜂窩織炎をおこしている場合は、丁寧にリンパ・ドレナージュを行なった後、最後にバンデージを巻きます。皮膚に栄養を吸収できるようにするためです。(リンパ切除手術などが原因で蜂窩織炎を起こしている方など)
もちろん、弱いタッチのリンパドレナージュは一般の方にとっても、良い結果をもたらします。全身のリンパが流れ、オキシトシンが放出され、肌も綺麗になり、リラックスできます。
リンパ・ドレナージュが毒素を排出し炎症を緩和
私たちの身体にリンパの機能があるのは、毒素をまとめ、ろ過し、体外に排出するためです。
また、炎症がある箇所の周囲の液の流れをよくすると、治りが早いです。
例えば、ヤケドをしたときは患部に触らないように、その周囲のリンパをそっと流すと治癒が早くなります。
整形手術をした後のケアーに、医師からもリンパドレナージュが推奨されています。
お顔だけでなく、バストやお腹などもリンパ浮腫のための施術(そっと触れるやり方)で行うと、治りが早くなります。
なお、手術後のケアー目的の場合は、エステなどできつい力を入れて行うリンパマッサージは絶対にやらないでください。
浮腫みによってダメージを受けた細胞をリンパに流す利点
多くの免疫作用は、リンパ節内で行われます。
リンパの通り道が滞り始めたり、詰まったり、ダメージを受けたりすると、余分な水分や 老廃物は結合組織に蓄積し、浮腫みの症状をひき起こします。
そして細胞の病変がはじまってしまうのです。
傷を受けた組織や慢性的な炎症などでダメージがある箇所では、ダメージを受けた細胞、炎症生成物、毒素をリンパ・システムでその箇所から排除してしまう必要があります。
これらがより早く機能すると、より早く治癒します。
施術目的のリンパ・ドレナージュの効果はさまざまで、具体的には以下のものに影響を与えます。そのため身体が自身で癒える方向へとサポートすることができるのです。
「神経系」
「平滑筋」(内臓壁,血管壁を構成する不随意筋. )
「結合組織間の 水分移動」
「免疫機能」
リンパ管は 、ポンプ作用やストレッチ効果によってリンパ液を動かして います。
MLD(リンパ・ドレナージュ)はリンパ管の収縮を刺激し、リンパ液を前進させる(動かす)助けをします。
ヨーロッパでDr. Vodder により開発されたMLDの“認定プラク ティショナー”によるリンパ・ドレナージュの施術は、以下の症状などにも用いられています。
静脈機能不全、
感染でない炎症(捻挫や筋肉のツレ)、
潰瘍、
皮膚の症状、
循環機能障害、
スポーツでの怪我、
やけど、
整形手術前後の処置、
一次性や2次性リンパ浮腫
参考文献:
PT Pugliese, L. Garafallou, 1996, "Lymphatic rinciples and Practice of Ophthalmic, Plastic and Reconstructive Surgery"
“「リンパ浮腫」知って”芳賀書店、廣田彰男著
Dr. Vodder MLD 資料