次に絶滅する動物は、クジラだろうと専門家たちによって予測されています。
ちょうど日本でも大阪湾にクジラが迷い込んできたニュースがありましたので、クジラはなぜ死んだのか?を深掘りしつつ、健全性について考えてみたいと思います。
地球のこと環境のこと健康のこと、自分ゴトとして振り返ってみるきっかけになればと思います。
いま人間に起こっていることと、まったく同じだなと思うかもしれません。
大阪湾に漂着したクジラが死んでしまった
数日前に、大阪湾ちかくの淀川河口付近にマッコウクジラが迷い込みました。体長15m重さ38トンの大きな雄クジラ。しばらく生きていた様ですが先日亡くなり私たちの悲しみを誘いました。
こちら↑のニュースの中で、あるベテランの漁師さんが「海の異変」について語っていたのですが、それを聞いて「あっ!」と声がでました。なぜなら、ヨーロッパの専門家たちが “海で起こっている危機的状態” について述べていた内容と、まったく同じだったからなんです。(それを公表したくなくて動画削除したの?と勘ぐってしまう)
それは表面的には見えないことだし大問題にはとうてい思えないこと。しかし実は根源的なこと!これから順にお話ししていきますね。
クジラが浅瀬に漂着することをStranding(ストランディング)と言います。このような事例が近年劇的に増加したのはなぜなのでしょうか。
クジラはなぜ死んだのか?を調べる
大阪湾にクジラが座礁するケースは年間に8件ほどだそうです。イギリス国内で報告されるクジラの漂着は年に数百件が報告されており、その数は年々増えている。これは世界的な傾向です。
大阪湾のクジラは剥製にするか破棄されるとのことですが、イギリスではクジラの死体が発見されると専門家チームが現場へ急行。検死解剖を行い死因の詳細を科学的に調査するそうです。死んだクジラの属していた集団や周囲の生態系に「どんな危機が迫っているのか」を知るためです。
科学を駆使して、生き物たちのおかれた状況を改善するとともに、それは人類を救うことにも繋がっていくわけです。
このことはイギリスのドキュメンタリー番組で知りました。クジラのことだから海のことだから、陸で暮らす人間には関係ない?などと、到底思えない様な内容でしたので、多くの人に知ってほしいです。
*海で見かけた不思議な光景⇨
クジラが置かれている現状と死の原因
科学的な検証を行うのは、ブラウンロー博士率いるスコットランド海洋動物座礁スキーム(SMASS)。クジラやシャチなど大きな海洋生物が座礁する理由は、主にこれらです。
1️⃣エンタングルメント(Entanglement )プラスチック類に絡まった状態
2️⃣騒音で耳が負傷
3️⃣気候変動
4️⃣海洋生物の脂肪に有害化学物質が蓄積
5️⃣免疫機能の低下と寄生虫やウィルス感染
6️⃣海水が酸性に傾いている
1つづつ解説してみます。関連性が無いように見えて実は同じ源が原因になっています。
特に地球が壊れることが如実にイメージできるのは⑥番の問題です!
1️⃣エンタングルメント〜プラスチックのからまり
エンタングルメントとは、海洋生物たちが網や縄やポリプロピレンなどプラスチック類に絡まった状態。網のようなものが体に絡みついたままでは、生活しにくく真っ直ぐ泳ぐことの妨げにもなります。
体力がどんどん奪われ、日を追うごとに体に食い込んでいってしまう。そうなると餌を探し食べることが非常に難しくなります。繁殖も行えなくなるでしょう。
海の生き物にとって負の連鎖となるエンタングルメントは、地球全体にとって深刻な問題です。
「現在使われている漁業の道具は、この先、数百年ものあいだ環境の中で消えずに残る。分解されることなく小さなかけらのまま広がり続けるんです。
海洋生物保護団体英国ダイバーズ海洋生物レスキュー:
ダン・ジャーヴィス氏
大西洋セミクジラは回遊性で、漁業の区域を通過します。そこで漁網に絡まって命を落とす個体が増え、生息数はたった350頭ほどに。2020年には深刻な危機に分類され絶滅の瀬戸際にいます。
2️⃣騒音で耳が負傷すると方向感覚が!
「海で騒音って?なんだろう?」と思いました。普段、目にすることがないからです。
1979年(巨大原油タンカーの就航)
1972年(人工地震波による海底資源探査)採掘する音
1946年(潜水艦・ソナー技術の革新)
1991年(洋上風力発電所の稼働)
これらが海で騒音公害をまきちらす原因となっています。季節によって長距離を移動する海洋生物や魚たちがいますが、その回遊ルートにこのような爆音を出す工場や機械があるのです。
大型船がゆきかう騒音が凄まじい海域を通過するクジラもいます。クジラは騒音に敏感で影響を受けやすい動物です。
漂着したクジラを調べる専門家チームは、クジラの頭蓋骨の上部を外して脳と「耳」を摘出して確認します。蝸牛と呼ばれる部位の細胞を調べれば、そのクジラの「耳が聞こえていたかどうか」がわかるのです。
また、クジラの耳骨を摘出し外耳道という部位を調べると、感染症が起こっているケースもあるそうです。感染のせいで聴覚障害になった可能性が高いと分析されています。
耳が負傷したら、方向感覚が鈍ってしまいます。いつもの回遊ルートを外れたり仲間とはぐれたりする大きな原因になっていると考えられます。
クジラやイルカは生活のあらゆる場面で「音」を使います。クリック音やバズ音を出し、「音波」の跳ね返りで環境を把握します。騒音問題は彼らの生死に関わること。人工的な騒音が海の中で増えることによって、音でコミュニケーションをとる海洋動物の営みが阻害されているのです。(セントアンドリュース大学 海楼哺乳類研究室 イソユノ博士)
海上の交通量は30年後には今の3倍くらいになると予測されているそうです。騒音は今後悪化していく一方だと。クジラは絶滅するしかないのでしょうか。
3️⃣気候変動と温暖化
地球の気候が変わり海水温度が上昇すると、海の生き物は移動せざるを得なくなります。いつも食べてた餌がなくなったら、生き残るために、何か別の食べ物を食べるしかありません。
たまたま日本で海苔の養殖を営む方への密着取材を先日見たばかりです。海苔の生産量が激減していて、養殖業を廃業する方も年々増えているそうですが、その理由は地球温暖化。
地球温暖化により、冬にはおとなしくしているはずのクロダイが、養殖している海苔を食べてしまうそうです。数年前はこんなことは一切なかった。まさかクロダイが海苔を食べるなんて!と、最初は驚いたそうです。
トップに貼り付けたニュース動画の中でも、漁師さんが「南方にしかいないはずの魚が大阪湾にいる」とコメントしてましたね。
こういったことは日本だけでなく、世界中の海域で起こっていることです。
4️⃣クジラの脂肪に有害化学物質が蓄積
クジラの皮下脂肪から、人間社会で公害の原因となる人工的な物質が検出されています。もはや海で起こってることだからと対岸の火事を見るような気分でいてはダメですね。
クジラの脂肪を調べると、体内に取り込まれた有害な汚染物質の量を知ることができます。さらにその結果は、「海の環境汚染がどのくらい進んでいるのか」の目安になります。
農業用殺虫剤やさまざまな添加物など、数百種類もの化学物質がクジラの体内から見つかっているのです。当然のことながら、海洋汚染はクジラの病気や体調不良の原因となります。
1913年(製造工程のスピード化)
1929年(PCBの大量生産開始)
1938年(中東で原油生産開始)
1947年(農業の効率化を法制化)
産業革命以降、私たちは様々な形で土壌や海を汚してきました。PCBポリ塩化ビフィメルなど残留性有機汚染物質がその代表です。PCBは広範囲に広がっておりほぼ全てのクジラから検出されています。
脂肪を蓄えているペンギンやクジラなどの動物は、たくさんの脂肪を蓄えているため、餌が乏しい時期も生き延びることができます。
クジラは長距離移動などで狩ができず餌が取れない時期は、脂肪に蓄えたエネルギーを使います。
しかし、このすばらしい自然の摂理が人害のせいで仇となります。
エネルギーだけでなく、脂肪に蓄積された有害物質も血中に流れ出るのです!汚染物質が血液に混じって身体中に回ってしまうんです。
これらの汚染物質は、数世代にわたって蓄積されていきます。これはレガシー汚染と呼ばれ、生殖器系にも影響を与えるので、繁殖が以前より困難になっている恐れがあるのです。(ロンドン動物学協会 ロージー・ウィリアムズ)
5️⃣免疫機能の低下と寄生虫やウィルス感染
漂着したクジラを検死解剖すると、胃のなかに何も入っていないことが多いそうです。いつもの回遊ルートを外れて迷子になり寒い海に入ってしまい、何日間も食べ物にありつけない。
クジラは写真↑のようにシルクみたいな細かいヒゲを持っていて、ここでオキアミや小さなプランクトンをこして食べます。
解剖で胃を開くと食べ物が入ってないとはいえ、病理研究所で詳細に調べるとマイクロプラスチックが検出されます。細かいヒゲも通過して思いっきり吸い込んでしまうんですね。
胃壁にも目に見えないマイクロプラスチックやその他の汚染物質が付着。そのせいで、クジラの免疫機能が大きく崩れてしまいます。生き物を病気から守っている免疫機能が弱まってしまうのです。
すると、有害な寄生虫が体の中で増えてしまいます。寄生虫はどんどん栄養を奪い取って、クジラをさらに弱らせます。
クジラにはもともと寄生虫がいますが、ちゃんと免疫が健康であれば体内の寄生虫は一定数に保たれ問題にはなりません。しかし体調不良になるとそのバランスが崩れて寄生虫が増えすぎてしまうのです。
このことは寄生虫だけでなく、ウィルス/菌も然りです。
地球の気候が変わり海水温度が上昇すると、海の生き物は移動せざるを得なくなります。行動範囲が変わったせいで、従来の生息域とは違う場所で接触したことのない初めてのウィルスに出会ってしまう。
初めてのウィルスには免疫がありません。その地域在来のウィルスに感染してしまうかもしれない危険性が。すでに免疫力が弱っているのだからウィルスに勝てるわけがない。
これも大型海洋生物が受けている地球温暖化による被害の一つです。
*地上の寄生虫のこと⇨
6️⃣海水が酸性に傾いている
陸地だけのことではなかった。
海中の炭酸が増えると、「炭酸塩」と言われる海の生き物にとって必要不可欠な物質の生成を阻害してしまいます。
例えば、魚のすみかである珊瑚は、炭酸塩がなければサンゴ礁を形成する骨格が作れません。甲殻類の生き物も、炭酸塩が少ないと体をおおう甲羅の質が悪くなり成長も阻害されるため、生存が脅かされます。
クジラにとって重要な餌は甲殻類のオキアミです。
炭酸塩の減少はオキアミの成長に影響を与えます。海域によってはわずか40年の間に最大80%も減っているという報告もあります。オキアミがいなければ生きていけないクジラにこうした急激な現象が及ぼす影響は計り知れません。(ロンドン動物学協会コルドウィ博士)
海水が酸性に傾いたことによる、さらに大きな問題があります。それは...
海に生える草は命の源→ほぼ消滅
冒頭に貼り付けた(けど削除された)ニュース動画の中で、日本人の漁師さんが語っていたことと重なります。「下に海藻とかがなくなっちゃったから、網に石が絡むんだよね」みたいなことです。
海に潜ると底には草むらが広がっています。海の草「海草」は、海の生態系にとって重要な存在であり命の源といえます。ですが....
世界のおよそ95%の海草が消滅してしまいました。
海草には、私たち人間が撒き散らした二酸化酸素を吸収してくれる力があります。
花を咲かせ、二酸化炭素を取り込んで、光合成をし、酸素を放出します。枯れれば土となって炭素を溜め込み、その場に封じ込めておく能力があります。
まるで地球の救世主のようです。
海草が生い茂る海草の森では、ニシンの群れやウミウシや蟹や貝など多様な生き物に出会えます。ここで育まれた命が大型の海の生き物にも滋養を与えています。
しかし、
命を育む海草なのに、もうほとんど消滅してしまっているのです!海の底にひっそり生えてるただの草、ここまで失ってるのにまだほとんど気づかれてない。
海と地球を救う解決策とは
海草の茂みは、熱帯雨林の35倍の速さで二酸化炭素を封じ込める力があります。そのため、極めて効率がいい地球を救う方法になるのです。(海洋環境保護団体SEAWILDING ダニー・レントン氏)
海草の森は、海の生物多様性そのもの。
すべての海の生き物の数を再び増やすことが、海洋全体の健康を取り戻すきっかけになる、と考えられています。その効果はやがて、クジラやイルカなどの大型の動物にも波及していきます。
海草が生い茂る環境を復活させれば、気候変動を抑制できることが明らかになり、ノルウェイの調査チームが、海草を植栽する活動をしています。
海草を復活させる低コストで成功率の高い手法を開発したそうです。この活動が世界に広がることを願います。
まとめ:
私たち人間が地上でまき散らし続けている有害汚染物質は、人体だけでなく、大量に海にも流れ込んでいます。
・二酸化酸素が増えすぎて気候も海水温度も上昇。
・海の生き物の体内から数百種類もの人工化学物質が検出される。
・海水のPhがものすごく酸化に傾いてしまった。
・海の生き物が暮らす「海草」の森もほぼ消滅した。
世界一大きな哺乳類であるクジラが直面している危機について知ることで、私たち人間に迫っている事柄について予測することができ、改善に役立てられるかもしれません。
海の草「海草」がこれほど海の生態系にとって重要な存在であることを知りませんでした。
さらには海草に、大問題となっている「二酸化酸素」を封じ込める能力があるなんて、希望の灯火が点ったような気持ちです。
海草の移植をすることで、クジラたちを救うことができるかもしれません。
このことが広く知れ渡り、海草の移植プロジェクトが世界に広がっていくことを心から願います。
あくまでも私見ですが
しばらくの間、私たちの人間社会は新型コロナウィルスに悩まされています。人間の活動によって他の動物から感染したものとみられていて、そのせいで全世界の人々を苦しめました。
同じように、クジラも行動範囲の変化によって「はじめて遭遇するウィルス」にさらされて体を弱らせているのです。
私たちは有機汚染物や化学薬品を過剰に使いすぎてしまったため、生き物が本来持っている能力が弱められています。繁殖能力も低下しています。命を落とす人数がまるで災害でもあったかのように増えてしまいました。
なにか根本的なところが間違っていないか。しっかり考えていきたいです。
そのためには、日頃から身体性をシャープに鍛えておくことが大切です。身体知を磨くのです。ボディーエコロジーは、地球のエコロジーへと繋がります。
自らの心や体を守れる様になるだけでなく、地球環境の現状を実感したり、クジラの辛さや苦しみがよくわかる様になれるかもしれません。
*自然な力を呼びさませ身体知を高める⇨
追記:
本日「ヨドちゃん」と名付けられたマッコウクジラは、歯を削るなど調査団によって調べられました。
和歌山けんと徳島県の間に広がる海域「紀伊水道」の沖に、30tくらいのコンクリートのおもりをつけて、明日 沈められることになりました。(2023/01/18夕刻news)
今回、日本が体験したクジラの座礁。これをきっかけに、さらに詳しい「クジラ死亡の原因」について知っていただけたらと思い記事にしました。
地球環境のリアルな現状と人間の行末を自分ゴトととらえるきっかけになったならうれしいです。“知ること” から何かが始まるのだと信じています。
続報:
大阪に漂着したクジラの淀ちゃんが海に沈められた本日、こんどは東京湾にクジラが迷い込んだというニュースが。(2023/01/19news)
東京海洋大学の村瀬弘人准教授は、背鰭などの特徴からみて体長12~13mくらいのザトウクジラと推定。
ザトウクジラは冬になると暖かい海水を求めて沖縄や小笠原諸島へいきますが、ここ5年ほどは海水温が高い状態が続き、600キロ以上も北の海域である伊豆諸島の三宅島や八丈島などでもザトウクジラが観察されるようになった。生息域が北へ拡大したせいで東京湾に迷い込んだのでは?との見解。 (2023年1月20日)
加筆:
トップに貼り付けていた動画が削除されました。ニュース番組だったのですが内容にマズい箇所でもあったのでしょうか。なんか気になります🧐(あえて削除された画面を残してます!)
なぜかというと、YouTubeには過去に日本の海岸に打ち上げられたクジラのニュースが、これまでにも沢山あり、10年前のニュースでさえもいまだに残っているからです。
消されたニュースの内容はある程度、このブログに書いておいたのでよかったです。(2023/02/06)