オーストリアのウィーン市内にあるシェルブルン宮殿の中には、世界最古と言われている動物園があります。
シェルブルン動物園は、とにかく敷地が広大で開放感にあふれています。そのうえ緑が豊かだし、柵が目立たない様デザインされているので、まるで森の中で動物達に出逢ったような雰囲気の中で見学することが できるのです。
あまりにも広過ぎて、一日じゃ全部は回りきれないでしょう。端から端まで歩くと、まるでトレッキングでもしたかの様に、かなり足が痛くなります。
なんせ、動物園の中はちょっとした丘があって、向こう側に行くにはそこの山道を歩いてゆかなくてはならなかったりするのです。結構たいへんだけど、森の中を歩くのはとても気持ちが いいんですよね。
雄のライオンがお食事中で、人だかりができていました。なにやら大きなものをムシャムシャと無心にむさぼっています。
よくみると、ダチョウの様なフラミンゴのような大形の鳥を『丸ごと』 食べていたのです。
大きくて立派なライオンが骨までしゃぶっている様子は圧巻でした。
少し歩いていると、ライオンだけでなく他の動物達もみんな「丸ごと」 食べていることに気づきました。
この日本の天然記念物でもあるタンチョウ鶴さんは、小さなネズミを丸ごと食べていました。係のお兄さんから一匹づつもらっていましたよ。(この鶴さんは、友好のしるしとして日本政府から寄贈されたそうです)
あとは、生きたミミズを必死に食べてたり、虫をまるごと食べてる小動物達もいました。
まさにここの動物達が食べているのは「ホールフード Whole Foods」すね!
Whole=全て。
その食べ物の全てを食べることで、一番理想的に栄養素が摂取できるという真の食べ方。
大昔から食されている方法ですが、近年ではマクロビオティックをはじめとする、自然療法や食養生で推奨されている食べ方です。
例えば、リンゴであれば皮と芯を捨てて実だけ食べるよりも、種も皮も ぜんぶ食べた方が栄養の摂取バランスが良いということですね。
結局、動物達が野生だったら食べるであろう食事に、近い形で餌を与えるのがいちばん彼らの健康にとって良いのです。
ライオンやツルなど皆が食べていた、丸ごと(Whole)一匹の動物。
骨も食べる事によってカルシウムがとれる。肉を食べることによって リンも摂取することができる。さらに胃袋を食べることで、中にある 上手い具合に発酵しかけた草や野菜を摂取することもできます。
イヌ科ネコ科は、そのままの野菜や穀物は上手に消化できないので、他の草食の小動物の胃の中にあるものを食べるのがちょうど良いのだそうです。
やっぱり、生物の自然な姿を見るのってイイですね。
我が家のワンニャン達に与えている餌も、できるだけホールフードを心がけています。
ペットの手作りフードについて、猫バージョンと犬バージョンをご紹介します。何かの参考になレれば嬉しいです。
❶ホールフード猫ちゃん編
我が家では犬や猫に手作り食を与えていますが、できる限りホールフード に近づけたいと意識しています。(完璧にはむつかしいのですが)
私が最初にペットの手作り食に出逢ったのは、NYのホリスティック獣医師であるドクター・エリオットに、「手作り食」の講習会に出席するよう勧められたのがきっかけでした。
その頃は犬もまだいなかったし、女王様キリちゃんだけがいた時代です。
手作り食の講習会で作ったのは、ターキーのなま肉を使った混ぜごはん。実習で作った手作りごはんを少し分けてもらい持ち帰りました。
しかし「うちのキリちゃんはキャットフードしか食べ ない」「生肉なんて食べないに決まってる」と、頭の中で考えていたのです。
お腹をすかして待っているキリちゃんに、こんなのあげたら怒る だろーなー、と思いながら、恐る恐る餌のボールに持ち帰ったターキー の生肉のフードを入れてみました。
すると、狂ったようにむしゃぶり付き、一口食べるごとにいちいち 私に向かって「美味しー!」「ウマい!」と訴え、興奮しながら あっという間に完食してしまいました。
食べ終わってからも「こんなウマいもん食べたことないっ!」とかって、 興奮して喋り続けていました。
思ってもみなかった猫の反応に、本当に驚きました。
そして「こんなに喜んでくれるのなら、がんばってみようかな」と おもい手作り食をはじめたのでした。
猫は当然のことながら猫舌ですが、ほんのり暖かくて、やわらかい食感の お食事を好みます。
それから犬は肉食の雑食ですが、猫は肉食の肉食だと、日本の獣医さんから教わったことがあります。
なので猫の食事は肉や魚や卵の量が、犬より多めになるように与えることが基本なのだそうです。
キリちゃんは今年18歳で歯も抜けてきています。
なので、野菜や肉片の 切り方が少しでも大きいのが混ざってたりすると、食べたものがうまく胃に留まらなくて、吐き出してしまうことがあります。
老猫にはとくになめらかな舌触りのお食事をあげた方がいい様ですね。
❷ホールフード犬ちゃん編
なま肉を与えるときには、骨付きでない場合、できるだけ別のカルシウムを混ぜるようにします。生肉の栄養素リンの吸収がよくなるからです。
リン(肉)はカルシウム(骨)といっしょにとらないと、犬や猫の体内で吸収が悪くなります。
まぜる野菜は、みじん切りにしたりスリおろしたりするか、もしくは 茹でて細かく切って与えます。
彼らが食べる小動物の胃袋に入ってる野菜の状態に近いものにする、ということです。
骨となま肉がいっしょならば、ワンちゃん達は容易に消化することができます。
ジョシュアがまだ10ヶ月くらいの時、生の骨付きラムチョップを与えたら、猫がそばにきたので、とられてしまうカモ!と思ったらしく「ゴックン」と丸呑みしてしまった事件がありました。
翌朝になって急いで獣医さんに駆け込み、レントゲンを撮っていただき ました。
そうしたら、先生はレントゲンをみて 「丸呑みなんかしてないですよ」「ほら、何も胃の中に残ってないじゃないですか」とおっしゃいました。
よく見てみると、大腸に消化され粉々になった骨が点々と写っていました。
なので先生は「ジョシュアちゃんは、ちゃんと噛んでから 飲み込んでいますよ」とコメントしました。
でもでも、私は目撃したんです!!
ジョシュアはたしかに丸呑みしました。
ということは、驚異的な早さで生の肉のみならず骨も消化してしまった ということです。
噛んでないのに、ちゃんと粉々になって腸まで行ってるなんてすごいです。
吸収や消化を考えた食べ合わせは人にとっても動物にとっても 大切ですね。
骨付きのなま肉を与えるのは、最初は勇気がいるもの ですが、この事件があってから、逆に自信を持って与えられる ようになりました。(ただし、老犬になったら骨つき生肉を与えることは中止してください。犬種により何歳から老齢期になるか違うので調べてください。)
火を入れた肉は、野生の動物は食べませんので、NGです。
火が入っているお肉は、彼らにとって消化がたいへんになってしまい、体内で腐敗しやすくなってしまいます。
知り合いの獣医さんの患者さんの秋田犬の話しなのですが、来客のために用意したお客様のトンカツをテーブルから盗んで食べてしまい、亡くなったのです。
ただでさえ火が通っているので消化しにくいところ、衣がついていたので致命的だったのでしょうか。しかも丸のみ。
当然ですが「骨」に火を通したもの調理した骨つき肉は、絶対絶対与えたらダメです!
生ならばぜんぜん平気で消化してしまう骨も、火を通したらたいへん。
噛み砕いたら、骨が鋭利な刃物のようになってしまい、内蔵を傷つけてしまうばかりか消化しずらいので詰まってしまう恐れもあります。
とは言うものの、小型犬だったり、初めて挑戦するときは骨付きの生肉を初っぱなからあげるのは怖いものです。
そんな時には、「パランコミンチ」が強い見方です。
パランコミンチとは商品名で、鶏やウサギや馬のお肉を骨ごとミンチ にしてあるものです。
これなら噛まずに飲み込んだとしても、飼い主さんも安心です。
ただ、難点がひとつ。
パランコミンチは人間のお肉屋さんで売っていないのです。購入は犬専用のお肉屋さんのネットショップになります。
ですので当然、冷凍なわけです。
冷凍すると、人間にとっても重要で、おなじく犬や猫にとっても重要である「酵素」が破壊されてしまいます。
もちろん、リンやカルシウムを摂取するとうい意味では大丈夫でしょうけれど、大切な酵素が死んでしまっています。
酵素は生命維持にとって、かかせないもの。
なので、もし冷凍お肉を与える場合は、生きている酵素を加えてあげる必要があります。生野菜が一番てっとり早いかもしれません。
それから忘れてしまいがちなのが、オメガ3のオイルです。魚や肉に含まれていますので、DHAやクイルオイルなど、オメガ3系の油を少しフードに混ぜてあげます。
ペット用のサーモンオイルもありますが、 亜麻仁油(フラックスオイル)やグリーンナッツオイルでも。
オイルが酸化すると体に悪いです。うちはオメガスリー系のサプリメントをハサミでカットして中のオイルを餌に垂らしています。こうすることで、空気に触れてすぐ食してしまう形になり、オイルが酸化しません。
これらのオイルは必須脂肪酸です。与えていると毛づやがよくなり、皮膚や細胞膜が健康になります。
こんなに考えることが沢山なのだから「今日のご飯は完璧!」 なんてことはありません。
それでも、足りなかったら翌日に補ったりしながら、ストレスを ためないようにやっていってます。
我が家に遊びに来て、犬猫にご飯あげる所を見た人達の中で 「なんか、いいな〜。あなたの家の犬になりたーい」 なんて言ってくれた友達もいました。
*追記:
パランコミンチはご家庭でも作れます。ミンチ用の器具を買って自分でひき肉にするのです。
目が荒いものでざっくりミンチにしたものを、目が細かいものに変えてもう一度ひくことで、さらに細かいミンチにします。そうすれば、猫ちゃんも食べられるくらいに骨が粉々になります。
ペットの手作りフード始めるなら勉強を
日本に帰国後は、いろいろな先生の書いた本を読んで勉強しています。
でも、まだまだ「これでOK自信がついた」というところまでは 行き着いていません。
専門家の書いた本も、それぞれ考え方がだいぶ 違っていますので、何冊も本を読んで、自分の家のペット達にとって一番よいものを選択してゆかなくてはなりません。
「こんなに簡単なんだから手作り食あげようよ!」という啓蒙運動が メインで、わりと必須栄養素や消化の方はちょっと怪しい本もあります。
それでも、カリカリのドックフードを毎日与えるのよりは、ずっとマシ だし健康維持に効果もあるので、それはそれでいいと思います。
ペット代替医療の先駆けであるアメリカの、広大な敷地内で飼っている 沢山の犬や猫の例をあげながら、フードを掲載している本もあります。
内容は素晴らしいのですが、生活環境が違うと栄養素や量に大きな違いが 出てしまうなぁと感じます。
この本を参考にした飼い主さん達、 口を揃えて「ペットを太らせてしまった」と言っておりました。
裏山で毎日の様に思いっきり走り回っている犬達と、日本のマンション でぬくぬくと暮らしている犬達とでは、運動量がかなり違うでしょう。
あとは「この本に従って食事を作ってたらノイローゼになるか、お金がかかり過ぎて続かないかも」という栄養的に完璧を目指した本もあります。
なにごとも、続かなければ意味がありませんよね。
でも、手作り食をはじめるのなら、こういう良書には一度は目を 通しておくべきと思っています。
人間に必要な栄養素と犬に必要な 栄養素も違うし、猫はもっと肉食傾向が強いし、年齢やライフ スタイルや犬種、それから病歴によっても、避けたいものと、とりたいものが違うからです。
それぞれの本の良いところを参考にてアレンジしてゆける様になると、一番よいと思います。
ペット達は「なんか今日のご飯は胃にもたれるぜ」とかって、まさか言ってはくれないので、食べた後の様子をみながら 改善を加えていくことが大切ですね。
犬・猫に効く指圧と漢方薬―ふれるだけでペットが喜び、元気になる
Herbs for Pets ペットのためのハーブ大百科 SECOND EDITION (Nanaブックス)
老猫のケア関連記事:
😺老猫の健康管理シリーズ:
老猫の健康管理について@ウンチ大作戦
老猫の慢性腎不全による排尿問題とエネルギー不足を補う食事ケア
老猫のケアおしっこ編、排尿問題が解決した理由とは
丸ごと食べるホールフードを実践する猫と犬とライオンと
老猫の症状はさまざまな体内変化の複合、ホリスティックに生命を見つめる
😽キリちゃん体験記:
足がカワイイ愛猫キリのLAホリスティック獣医さん体験談
愛猫が19歳になりました〜9.11を独りでのりきった猫
愛猫が20歳になりました〜老猫が美しく健康でいられる秘訣とは
涙のゆで卵、21歳の愛猫が旅立ちました
私がエゴを手放したとき、老猫は旅立つことができたのです